豊後服装lab.コラム

世代を超えて繋いだ想いが、新たな街でさらなる物語を紡ぎだす

コラムイメージ

大分駅から徒歩圏内にある五番街商店街。その中にあるセレクトショップ『die quelle(ディエキエル)』をはじめ、複数の店舗を展開している合資会社みはらのプロデューサー兼チーフバイヤーの田口(三原)和恵さん。3世代にわたり続く会社を守りながらも新しい領域に挑み続ける彼女が、経営者として大切にしていることやホームタウンである大分の街についての想いを語る。

家業を継ぐなかで出会った、
府内五番街商店街という新しい場所

私の出身地である宮崎県延岡市は、昔から旭化成株式会社の工場があって、繊維産業が盛んな街でした。その土地柄を活かし、祖父が「みはら洋品店」を営んだのが、『合資会社みはら』のルーツです。創業時、制服の仕立てからスタートし、時代の変化に合わせて取り扱う商品を変え、祖父から父へ事業が継承されてきました。私は今この会社の3代目として、大分の街で働いています。

高校卒業まで延岡で過ごし、東京にある文化服装学院のスタイリスト科に進学。卒業後はスタイリストを目指していました。ちょうどアシスタントについて半年ほど経った頃に、父から連絡があって宮崎に戻ることに。まだ東京にいたいと言う気持ちも強かったですし、自分の目標を達成したいという想いもあったので、宮崎に戻ってすぐにフランスに留学!パリの16区にある語学学校でフランス語を学んだり、商品の仕入れをしたりと、たくさんの人との出会いにも恵まれました。慌ただしい日々のなかで充実した時間を過ごしていたのですが、留学中にお店の経営が厳しくなってしまい、またすぐに宮崎へ。そこから私の3代目としてのチャレンジが始まりました。

20代後半の頃には、宮崎市にセレクトショップを出店したり、素敵なご縁があって結婚したりと、仕事もプライベートも大忙しでしたね。夫が仕事の都合で、大分に引っ越すことが決まったのをきっかけに、私も少し遅れて大分へ。引っ越してすぐに、お付き合いのあるメーカーさんたちから、「大分にいい街がある!」とご紹介いただいたのが、この府内五番街商店街だったんです。実際に足を運んでみるととても素敵な商店街で、2006年に大分市1店舗目となる「die quelle」を出店しました。

走り続けるために選んだ道と
人生のターニングポイント

「die quelle」のオープンをきっかけに、九州内に着々と店舗が増えていきました。順調に店舗を拡大できた理由は2つあります。1つめはお店のスタッフがどんどん育ってくれること。スタッフが成長してくれるのはとても嬉しくて、私のモチベーションにも繋がっているんです。祖父の代からの会社を引き継いでいくなかで、仲間づくりや人生を一緒に楽しむことが大好きなんだと気がつきました。「スタッフと一緒に楽しむ」という価値観を大切にお店の運営をしています。

そして2つめはブランドさんとのお付き合いを長く続けられていることです。ひとつひとつのブランドさんと長いお付き合いができるよう、関係性を大事にしてきました。フランス留学時代に出会ったブランドやデザイナーとも未だにお取引があります。合資会社みはらの企業理念は「人と物の縁を繋ぐ企業」なのですが、いい物と人をしっかり繋げることができるように、いつもこの理念を大切にしています。

そしてこの会社にいたら「何か楽しいことが経験できる」とスタッフに思ってもらうために、私は立ち止まることなく、ずっと走り続けていないといけないなと思っています。時代の変化に合わせてアパレル業界の価値観が揺らぐことも過去にありましたが、そこで負けていられないなと思って、新たな領域にチャレンジしました。それが3年前にスタートしたエステティック事業で、人生のターニングポイントになったと思っています。

“お客様を綺麗にする仕事”
アパレルとエステを結ぶ共通点

エステティック事業の経営をするにあたって、私自身もエステの資格を取得しなければいけなかったのですが、アパレル事業をスタッフたちに任せることができたので、安心して勉強に励むことができました。業務提携しているエステティックの会社は世界で一番大きいエステティックの団体で、グローバル経済誌『Forbes』の日本版『Forbes JAPAN』主催の『Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2019』でその功績が認められ、従業員規模300名未満の部でグランプリを受賞しています。愛媛県松山市にあるエステティシャンの養成学校では、施術のスキルだけではなく、生き方や働き方についても学ぶ機会があり、自己成長をさせてもらったなと感じています。

アパレルとエステティックは、まったく違う業種のように思われがちですが、「お客様を綺麗にする」という根本の部分では同じだと思っています。エステティックの仕事を通して、アパレルの仕事だけをしていたときには気がつかなかった新たな視点で物事を考えられるようになりました。エステティックを通じて学んだことを、大分に持ち帰って店舗のスタッフに共有をするようになってから、会社の雰囲気にも変化がありました。「何を目標に、自分がどうなりたいのか」を踏まえて、「どんな風に仕事をしていくのか」ということをしっかりと伝えながら、みんなで会社をつくっています。今年の会社のテーマは「成長」。振り返ったときに、この1年でどれだけ成長できたかをお互いに気がつけるようにスタッフたちと一緒に取り組むのはとても楽しいですね。

ホームグラウンドの大分で
アウトプットに挑み続ける

最近では私たちの会社だけではなく、商店街のみなさんとも様々な情報を共有する場を設けるようになりました。私が学んだことを伝えたり、新型コロナウイルスの支援制度を使って、外部講師のセミナーをリモートで受講したりと商店街全体で学ぶ機会をつくっていっています。この取り組みは「この商店街に出かけたい、出店したい」と思ってもらえるような、魅力ある商店街づくりを目指してスタートしました。

一時期は大分駅周辺も、「郊外型のショッピングモールにみんな行ってしまって、街に誰もいなくなる」という地方都市によくある状況が続き、街の元気もなくなっていて…。 でも数年前にアミュプラザおおいたができたことによって、街にお客さまが増え、近隣の商店街も活気を取り戻すことができました。だから私はアミュが大分駅にオープンしてくれたことを本当に感謝しています!買い物をするときにもいろいろな価値観があっていいと思っていて、そのためには選択肢がたくさんあることが大切です。ファッションビルも百貨店も商店街も一緒に大分の街を盛り上げていけたらいいですよね。

夫の転勤がきっかけで引っ越してきた大分ですが、今では私にとってのホームタウンになりました。もうすっかり大分人です(笑)。今後はアパレル事業やエステティック事業はもちろん、さらに新たなことにもチャレンジしていけるといいなと思っています。セミナーを通じて知りあった方々や講師の方たちと、大分の街で一緒にアライアンスできるように頑張っていくのが目標です。ターニングポイントをきっかけに新しい何かを知ることは、自分の人生を豊かにするということを学びました。これからもインプットしたことをどんどんアウトプットして、積極的にお店や大分の街に還元していきたいですね。

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田口(三原)和恵 TAGUCHI KAZUE