豊後服装lab.コラム

あえて”余白”を作った、コンセプトから自由になるファッション。

コラムイメージ

ジャンルには囚われたくないですね。その方が面白いし、「おしゃれ」ということを考えるでしょ?

「●●● ― ―(TONTONTONTUTU)」ってどういう意味ですか?

モールス信号で数字の「3」を表す記号のことです。お店を一緒に立ち上げた人数が当初3人で、そこから名付けました。

お店を始めて今年でどれくらい経ちましたか?それにしても閑静な住宅地に突然現れたという印象のお店、なぜここの場所で、また大分でお店を始めたんでしょうか?

お店を始めてから5年経ちましたね。ここは元々、親父のバイク屋だったんですけど、廃業してからは使われなかったのでこの場所を自身の店として再び使うことにしたんです。あとはやっぱりファッションといえば東京、っていう発想もあって東京に行くことも考えたんですが、お店を持ちたいという気持ちの方が強くて。大分でもファッションを好きな人や、ファッションを創造していきたい人たちが集まれる場所作りができたらという思いもあって、大分でお店を開くというスタイルを選びました。

アパレルアイテムはもちろん、バーカウンターがあったり、かき氷をされてたり、本があったり。様々なものを扱っているようですね。このお店って、“アパレル”というジャンルで合ってますよね?

お店のジャンルは、そんな風に不思議に思われている位がいいです。バー営業も予約が入ればやりますし、ゲーム機も置いているので遊べますし、ライブ会場として場所を提供することもあります。僕自身も、ジャンル不明という位置がいいと思ってます。

お客さんにはよく、どんな場所だと言われますか?

「長居してしまう」とよく言われます。僕自身も「長居してもらおう」と思ってやってます。長居というか、色々と話しがちなんだと思います。お店には今まで自分で面白いと思ったものを、服飾問わず蓄積していってます。本を読んだり、映画を見てもらったり。それが服ならありがたい話ですが、何でも構わないので、「面白い」と感じるものを拾って帰ってもらえたら。

色々なものが置いてある中でも、もちろんセレクトされているのがすべて首藤さんということは大いにあるかと思いますが、不思議と一貫性を感じるような。お店のコンセプトを教えて頂けますか?

「片足をドブに突っ込んだファッション」です。

「片足をドブに突っ込んだファッション」ですか、その心は(笑)?

コンセプトにあえて余白を設けるというイメージですかね。そこからいろんなイメージを膨らませて欲しいので、意味は色々とあるんですが、公表しないでおきます。きっとお店に来て頂けたら感じ取ってもらえるんじゃないかと信じてますので。

TONTONTONTUTUで扱っているアパレルアイテムについて教えてください。

一着一着、モノによって装飾してみたり、解体して形を変えてみたり。基本的には手を加えたオリジナルやリメイクもの、古着も取り扱ってます。

例えばこの服だと元々シャツだったものを表裏の生地をそのまま使って、別の生地を組み入れてスカートにしてみています。

一着一着、モノにより“加工”の仕方を変えるということですが、そんな中でも服作りにおいて一貫して意識していることはありますか?

よく言うような「◯◯系ファッション」の枠に、あくまでも当てはまらないような服作りを意識してます。アートで例えるなら注釈やタイトルを付けず、作品はあえて「無題」にするようなイメージですかね。

もちろん何も考えていないこととは違って、最初からコンセプトやイメージを与えるんじゃなくて、お客さんに考えたりイマジネーションする機会を持って欲しいという考えから、そんな服作りをしてます。

コンセプトやコーディネートも聞かれたらお答えするようにはしてますが、「こういう着方してください」とか「これ似合いますよね」というアドバイスも極力控えてます。

お店のアイテム、一つ一つに特徴的なデザインが入ってますよね。コーディネートするのって、ちょっと難しそうなイメージです。

でもその合わせの難しそうなものを身につける時って、ものすごく考えると思うんです。その考えることをしてみる、ということが大切だと思います。脳も活性化されますしね(笑)。

いままでのお仕事はファッション一筋だったんですか?

工業高校で建築を勉強した後に、実は一度、建築関係の会社に2年ほど入社してた時期がありました。当時は現場監督を担当してました(笑)。

元々服飾には興味はあったんですけど、何も始めてない時点で、鼻っから業界自体を諦めていて。でも働くうちに、本当にやりたいことを仕事にしたいという気持ちが強くなり、東京の文化服装学院で服飾について勉強することにしたんです。

学校を卒業してからは、ブランドのパタンナーのアシスタントからはじめ、一通りアパレルの職種を勉強しようと、生産管理・商品企画・営業が一挙に担当できる会社に勤めたり、販売も経験した後に、現在のお店をオープンさせました。

首藤さんにとって、ファッションってどんな存在ですか?

強いて言うならば、ファッションは「ツール」の一つだと思います。ツールというのは、自分の思いや考え方、やりたいことを伝える手段のことです。本、文章、言葉、映画などと同じように、服もまたそのツールであっていいということです。

いろんな手段を使って「こういう考え方もあるんだな」「こういうのもアリなんだな」という具合で、今までの発想の中になかった新しい“可能性”のようなものを感じてもらえればうれしいですね。

おしゃれな人って、どんな人だと思いますか?

例えばクラブに行って、イヤホンで落語を聞いているような人ですかね。クラブっていつも大音量で音が流れていて、それって絶対聞こえてくるでしょ。そんな半強制的と言える位に情報が流れてくる環境の中で、クラブミュージックでなく真逆のジャンルの落語をあえて選んで聞く。それってすごく意思が強い姿勢がないとなかなかできないですよね。

情報はどう遮断しようがどうしても流れてくるものですが、自分を取り巻く色々な情報がある中で、主体的に選び取ったり、自ら考えて服を選ぶ人が、僕はおしゃれだと思います。そういう人っていつも常識が覆されるような姿勢を持っているような気がして、とても魅力的です。不思議とそんな姿勢を持っている人って、ファッションにも自然と表れるんですよね。

それなりに個性があるファッションをしようと思ったら、ある程度の度胸がないとそう簡単にできることじゃないと思います。そういう面白い存在の人がいて、それを見て刺激される人もいて。そんなサイクルを、自分も生み出せていけたらと思います。

普段はどんなことを意識して、服を選んでますか?

そのシーンに合わせた服選びをしています。でも“TPO”とはまた違った話で、その場に合わせた格好というよりは、その場に存在していたい自分に合わせた格好という方が正しいです。

例えば仕事の場面だと、職人気質な自分でありたいので、今日みたいにあまり派手な服は選ばなかったり。今日は取材とお伺いしてたので、自分なりに気合いを入れてみてます(笑)。この店から普通の格好をしてる僕が降りてきても、あんまり説得力ないでしょ?「こんな奴が言ってるから仕方ないか」という、ある意味での説得力のようなもの感じてもらえるように服を選んでみました。

服選びの時に惹かれる、服の特徴や合わせ方を教えてください。

柄・色物は好きですね。合わせ方は、1つ見せたいアイテムを決めて、アイテムを揃えていく感じです。でも“際どいライン”は攻めたい。例えば「これは絶対に合う」ような、わかりやすい配色があるとしたら、そこに違和感のある色を取り入れてみたり。「これはおしゃれなの?」と、おしゃれであるかということさえも考えさせるようなコーディネートをしてみるのが好きですね。「あの人は何を着ててもおしゃれだな」という人になってみたいもんです(笑)。

MY FASHION STORY

この日のコーデのポイントは花柄の羽織り、最初は古着屋で見つけて、「絶対誰も買わないだろうな」と見ているうちに、これを羽織って朝、花に水やりをする自分の姿が浮かんだそう。まさに「店先で朝に花の水やりをする習慣を持つ自分」でありたいコーデ。服があって習慣が生まれ、服があるからやってみたくなることが増えるような服選びを最近するようになったそう。

今一番“ホット”なモノを見せてくださいとお願いすると、先日ファッションショーで背中に“生やした”置物を見せてくださいました。置物は以前から制作してみたかったのでそうで、ショーはいい機会だったそう。アバターが背中から生えていてるイメージの置物とのこと。

最後に「自分がやっていることがスタンダードなことになったら、また新しいことを考えます。考えることが楽しいんですよね。」と語ってくれた首藤さん。別府溝部学園短期大学ではファッションの講師として、コーディネートの授業も担当されているそう。取材時も服飾を学びにと、若いスタッフさんが首藤さんのもとで真剣に働かれている姿がありました。

常に新しいモノ、新しい考え方のヒントを与えてくれる存在である首藤さんのもとには、色々な人々が自然と集まるのかもしれませんね。店内のライトが帰り際、なんとなく後光のように見えたのは、気のせいでしょうか。

首藤 渉 WATARU SHUTO

別府のアパレルショップ「TONTONTONTUTU (トントントンツーツー)」オーナー。建築業界を経て、文化服装学院にて服飾を学んだ後、ファッション業界のキャリアを幅広く経験。現ショップを2013年からスタートさせる。前衛的で独特のデザインが存在感を放つショップには、県内外を問わずファンも多い。