豊後服装lab.コラム

「白と黒」が生み出す、ファッションのグラデーション。

コラムイメージ

創造性を高め合う”白と黒”の化学反応

月に10日間だけオープンするというtohkaさん。変わった営業スタイルなんですね。どんな場所か教えてください。


出水さん

Tohkaは今年でもうすぐ2年を迎える、アトリエ兼ギャラリーです。月替りで県内外のいろんな作家・アーティストさんの展示・販売を行っています。変わった営業スタイルだとはよく言われるのですが、私たちのベースは物を作ることなので、月のうちの営業日以外は全て製作に時間を充てて、営業期間中の10日間に作品を提供して行くというスタイルなんですね。

個人で活動を行なっていく作家さんも多い中で、お店というスタイルを選んだのはなぜでしょか?


小路さん

楽しんでもらい、それをリアルに目前で感じられる場を作りたかった、ということが大きな理由ではありますが、何より「人を繋げていく」ということをやってみたかったからです。ありがたいことに私たちのお店にはモノ作りをする方もよく訪れてくれるのですが、お客様はもちろんのこと、作家さんと作家さんが結び合う機会として使える場があれば、という思いもあって、お店というスタイルを選びました。
実際にここで出会って、共同の展示会が実現したこともあったんですよ。場所自体を創造性のあるものにしたかった、とも言えるかもしれません。

お二人がそれぞれ製作を始めるようになったきっかけを教えてください。


小路さん

祖母の代から編み物をするということが日常的に側にあって、自然と子供の頃から触れる機会があったことが大きいですね。遊び道具は当時からすでにニットの道具でした。そんな幼少期以降ずっと、編み物を作っています。ニット作家をする以前はいろんな仕事を経験をしてきたものの、仕事の重点を作ることにシフトしたいと思いも以前からあり、いまは作家として活動をしています。出水さんとは共有の知人の引き合わせで出会い、「お店をするなら帽子のあるお店にしたい」という私の希望もあって自ら声をかけました。今では願いが叶って、一緒にお店を開くようになりました(笑)。


出水さん

実は「子供の帽子を作ろう」と思った時に自分では上手く出来ず、以前住んでいた東京の帽子教室に通い始めたことがきっかけ。地元・大分に戻ることになり、仕事について改めて考える機会があったことが現在の作家活動のスタートです。自分ができることを仕事にしたいと考えた時、真っ先に浮かんだのが帽子作り。それから2009年に自身のブランド「French MARIGOLD」を立ち上げました。

お互いの作品の魅力について教えてください。


出水さん

独創性のある「見たことのない」ような作風が魅力だと思います。小路さんの作品に対しては、まず色彩に感動して。色使い、組み合わせ方が緻密でありながら、想像を超えてくるような色彩ですね。あとは小路さんの自由な気質が作品にも伸び伸びと表現されていて「ニットでこんなことができるんだ」という新しい可能性を見せてくれること。可愛らしいだけではない、彼女の作品ならではのユニークさが感じられる作品になっていると思います。作品を選ぶ方も、自由に決まりなくファッションを楽しんでいる方がとっても多いですよ。

小路さん

一目で見えないようにしているんですが、実は仕掛けや意味を作品にはたくさん散りばめています。どんな仕掛けや意味なのかは、見つけてもらえたり、自由に感じてもらえたらうれしいですね。

出水さんの作品の魅力はどんなところにあると思いますか?


小路さん

帽子というアイテムはもともと好きで。色々と今まで帽子を見てきた中でも、オリジナリティを強く感じるところじゃないかと思います。出水さんの帽子は、製作の過程で手でつまんで捻りを入れてみることで独特の波が出ていたり、斬新なカッティングが施してあります。でもそれでいて、決して刺々しくない。アイテム単体で見てみると個性的な帽子でも、被ってみると不思議と馴染んでくれるところが特長だと思います。出水さんの帽子は、ひとつのものを大切にされる方、こだわりを感じる方がよく楽しんでいるなという印象です。

出水さん

帽子に取り入れて表現したいことはたくさんあるのですが、あくまでも帽子は被って馴染むものであることが望ましいので、自分なりにかなり引き算をして製作しています。華美になり過ぎるものでもいけないし、もちろん普通のものが作りたい訳ではない。自分で作るからこそできる、絶妙な「隙間」を狙って、帽子は作るようにしています。

帽子、ニットとアイテムは違うものの、きっと何か共感できるものがあってお店という場所で活動を重ねているのではないかと思うのですが、お互いの「似ているな」と感じることはありますか?


小路さん

実は二人、性格も製作に対するモチベーションも真逆なんです。お互いのことはよくわかっていないことばかりで(笑)。でもそれがものすごく刺激的で日々面白いんですね。例えば出水さんが帽子作っているところを見て、それに合うニットを作ってみたくなったり。


出水さん

私もありますよ(笑)。小路さんの製作を見ていて「これってアリなんだ、やっていいんだ」という新たな発見があったり、自分の作品にも取り入れたりすることもあります。

どんな人がおしゃれだな、と感じますか?


小路さん

おしゃれをシンプルに楽しんでいる人だと思います。極端にいうと、「楽しければいい」とも思います。私自身もスタイリングの中で「実験的な要素」として楽しめるものを意識して作っています。楽しんでいて、そのファッションがその方に馴染んでいると、粋だなと思いますね。


出水さん

小路さんと重なるところはありますが、好きなものを自分のものにできている人だと思います。簡単にいうと、流されない人。それでいうと小路さんも「曲げない人」ですよ(笑)。「これが着たい」という意思がはっきりしていること。いい意味で「気にしない」ことが大切なんじゃないかと思います。


小路さん

出水さんは個性的な洋服を着こなしていますよね、かっこいいです。個性的な洋服が似合うのって、やっぱり出水さんと同じく、「気にしない」ことが大切なんじゃないかと思います。真逆の私たちではありますが、ここだけは唯一似ているところかもしれませんね。

好んでいつも身につける服は、どんな服ですか?


小路さん

オフの日は他の色の洋服を着ることもありますが、基本的に在店中は「白」をメインにするということは決めていることなんです。「真っ新な状態で何事も入り込んでいたい」という気持ち作りのために自分にとっては必要な要素なんですね。好んで身に付けるものは、形が面白くて、いろんな着方ができるもの。私の作品を着てくださる、お客様のスタイリングから発見することもよくあります。


出水さん

私は逆に「黒」を身に着けることが多いです。小路さんのように決めて着ているわけではないんですが、どうしてもいつも気になってしまうのが黒なんですよね。黒以外の色は、黒の挿し色のような感覚で自分のファッションには取り入れることが多いです。thokaを立ち上げて初めて行った私たちの展示でも、私は黒の帽子、小路さんは白のニットをテーマに共同で「白黒展」という展示を行ったこともありました。

作品のアイデアソースはどんなものから影響を受けますか?


小路さん

私は「人工物」からアイデアをもらうことが多いです。街角や建物、インテリアの本を見たり、時には床を見て「これを作ってみよう」とか。ニットは曲線でやわかなイメージが強いかと思うんですが、「直線の作り」を取り入れてみることも珍しくありません。


出水さん

私は「自然」から着想することが多いです。帽子作りではコサージュを必ず習うので、自然と目が向かうようになったこともありますが、散歩の途中にある花とか。必ず曲線を意識して、ラインの美しさの出る帽子になるようにしています。

MY FASHION STORY

二人に洋服を着るポイントを聞いてみると、「アイテムで着たいものがあると、それに合わせて全体のバランスをとっていく」という小路さんに対し、「全体のバランスを意識している。作りたいシルエットに対して、アイテムを組み合わせていく」と答えてくれた出水さん。本当に面白いくらい真逆のお二人は、太陽と月、朝と夜、男性と女性など、世の中には決して交わらずしてどちらとも欠かせない「対」が存在しますが、白と黒。無限大のグラデーションを作品として作り出していく存在として、必然的に出会ったのかもしれません。

小路 かおり / 出水 亜衣子 KAORI SHOJI / AIKO DEMIZU

※小路 かおりさん(左) / 出水 亜衣子(右)さん

月のうち1〜10日の間のみ営業をする大分市のギャラリー&アトリエ「tohka(トウカ)」に常時在廊している帽子クリエーターの出水亜衣子さんと、ニット作家の小路かおりさん。各々の作家活動の他、tohkaにて「人とモノとの出会い」で生まれる、新たなクリエイションを生みだす場の仕掛け人としても活躍。独創性ある作品には定評があり、県内外問わずファンも多い。