豊後服装lab.コラム

ぬくもりと「物語」のあるファッション。

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手作りのぬくもりと、背景のあるものづくりの価値

「編み物作家」さんにははじめてお会いしました。いつから、そして現在はどんな活動をしていますか?

大学生のころに、学園祭やイベントの場で小物の展示や販売をはじめたことが、現在の活動の礎になっています。ちょうどその頃から小物作りだけにとどまらず、インスタレーションという空間に対して編み物を制作・設置していくアート作品をスタートさせました。現在はそんなインスタレーション作品から、イヤリング、ピアス、ブローチなどのアクセサリー作りにも取り組んでいます。

最近”新しい試み”をやってみたそうですね、どんなことをされたんですか?

先月10月の初旬には、アーティストが多く在住し、展覧会やダンス、音楽、映画上映などの文化的な活動が盛んな別府で「ベップ・アート・マンス」という、文化・芸術に関わるたくさんのイベントを集めた市民文化祭が行われました。その一環として、わたしは「ウゴクギャラリー」という、自作の小さな移動式ギャラリー(リヤカー)を使い、別府のまちを3日間、場所を移動しながら色んな場所で展示・編み物の制作するという新たな試みを行いました。アート作品を展示するときに、「一緒に自分もその一部になれるものをつくりたい」と思っていたことが、アイデアソースになっています。

とっても愛らしい作品、どんなものが着想源になっていますか?

ちょっと変わった多肉植物、石、海のサンゴとか。そういった自然のものからアイデアをもらうことはよくありますね。「ちょっと気持ち悪い」「カラフル」な、ひとクセあるものには特に惹かれます。実物からはもちろん、写真や映像からインスピレーションを受けることもよくありますよ。自然の人の手には及ばいないようなパワーや美しさに触れるという経験が、作品作りの原動力になってます。

その自然の「美しさ」や「パワー」を、なぜ編み物を使って表現されているんですか?

最初は映像や映画に興味があったのですが、自分の中で「うまく形にできないな」っていう悩みがあって。そんな時に、「自分にとって身近な編み物なら、いろんな形や表現がより自分の理想に近い形で再現できるんじゃないかな」と思い立ち、作品を作り始めたことがきっかけです。

あと編み物って、やっていくとできる形ってあるんですよ。1本につながった糸は、微妙な力加減や編み方によって、うねうねとした独特の曲線だったり、シルエットのものが繊細に表現しやすい。自分のしたい表現に対して、柔軟に色や形を寄り添わせることができるということが、作品作りにおいては魅力的な素材じゃないかと思うので。あとは編み物ならではの柔らかさやぬくもり、温かい表情が触感や視覚にも伝わるところもあって、編み物という表現方法にしています。

作品やアクセサリーを見て、どんなことを感じてもらえると嬉しいでしょうか?

作品を見ていただいて、「ははー、よくこんなの作ったね」と言われると結構嬉しいです。編み物ってやっぱり地道な作業だったりするので、作品を作り上げるまでの工程というか、物語のようなものを感じていただけることが嬉しいんだと思います。ひとつひとつ手作業で、なかなか量産はできないですが、できるだけ多くの方の元にお届けできるようがんばっていきたいです。

そんな池田さんの作品やアクセサリーを手にとって楽しめる場所を教えてください。

全国で展示を行いながら販売もしていますが、大分では別府市の「セレクトベップ」という、別府にゆかりのある作家さんの作品やお土産を紹介しているセレクトショップさんでアクセサリーを常時置かせていただいています。

どんなお洋服が好きで、着ていることが多いですか?

古着が好きです。別府に住んでた頃には、地元の方から、洋裁でひとつひとつ手作りされた古着をいただいたこともありました。量産では実現できないような、一つだけしかないありがたみのあるお洋服が好きなんだと思います。洋服は「誰かが作ったんだろうな」っていうのが見えたり、ニットとかが売ってあると「誰がどこで編んだんだろう」って。やっぱり不思議と手作りのものは、すごく気になってしまいます。

ある意味”職業病”かもしれませんね(笑)。手作りのものの魅力って、どんなところにあると思いますか?

そこに背景というか、「物語」があることじゃないですかね。作ったひとや、着ている人が「どのくらいの時間をかけてつくったんだ」「こういう生活をしてるんだ」とか、そういう時代や暮らしの背景が見えるとことが、自分の中では価値になっています。なので編み物でないものでも、刺繍のお洋服にも同じことが言えて、すごく好きなもののひとつになってます。

池田さんが「おしゃれだな」と思う人って、どんな人ですか?

タイムリーな人でいうと、樹木希林さんです。年齢を重ねても、とってもおしゃれでしたよね。「私はただ着てるだけよ」みたいに、実はこだわりがなさそうにしていたけど、例えばいただき物のお古、しかも男性ものの洋服をさらりとファッションとして取り入れていたり。希林さんのものに対しての、概念にとらわれないようなシンプルな考え方やものの見方が素敵だな、と思ってます。

MY FASHION STORY

「母に教わったことがきっかけで小さい頃から編み物が好きで、日頃からよく編んでましたね。 外に遊びに行くときですら持ち歩いて編むくらいでした(笑)」。幼少期は手提げに常に編み物を入れていて、行った先で暇さえあればずっと編んでたという、筋金入りの編み物好きな池田さん。

取材当日はお気に入りの古着に、お手製のブローチとニット帽を身に着けてきてくださいました。悩みは少し身長が低いことだそうで、全体のバランスが良くなるよういつも気にしているそう。洋服に限らず「かわいらしいもの」が好きだという池田さんには、ぴったりのかわいらしいスタイルだと思うのですが。

これから寒さ深まる季節、ニットやマフラーがどんどん手放せない季節になりますね。お手頃なニットもいいけれど、たまにはぬくもりのある手作りニットに身を包んででぬくぬくしてみるのも、心もひとつ温まるようでいいかもしれません。

池田 ひとみ HITOMI IKEDA

別府市に移住経験を持つ、福岡県福岡市在住の編み物作家。幼少期から編み物をはじめ、現在は空間に編み物を作品として創り出すインスタレーション作品や、編み物を気軽に楽しめるアクセサリーを制作。作家・アーティストとして全国で展示・販売を行っている。