豊後服装lab.コラム

あの日の無鉄砲さが生み出した喜びの連鎖の先にあるもの。

コラムイメージ

乗っていたバイクを売ったお金で技術を習いに東京へ。今考えたら無鉄砲以外何者でもないですけど、変な根拠のない自信だけはあったんです。

まずはディアストックを開店するまでの鈴木さんのご経歴やあゆみなどをお聞かせいただけますか?

実はディアストックをやるまでは家のリフォームとか、ファッションや彫金はもちろんアクセサリーとかにも一切関係のない仕事をしてたんです。ただ、人と関わる仕事というか、接する仕事、簡単に言うと接客業なんですけど、それよりもう一歩踏み込んで「人が喜ぶ仕事」をしたいなぁと漠然と思うようになっていって。単純に自分ができる技術で、何か人が喜んでくれるみたいな足し算のような関係ができるといいなと思ってた時に、彫金とか革の制作ってそういえば大分にひょいっと行けるようなお店もないし、面白いかもって。

それまでに何か彫金の技術は学ばれていたわけですか?

いえいえ、全くです(笑)まず最初にさっきのような考えの流れがあって、さぁどうしようかと、そこからいろいろ雑誌とかで調べはじめて。で、東京にやりたいスタイルのお店を見つけたので、お問い合わせしてみたら「こっちにおいで」って感じで言ってくれたものだからそこだけを頼りに、上京しようと。そこで手始めに友人にヤフオクで当時乗ってたバイクを売ってもらって「心配だったから直接売りに来ました」ということで大分から東京までそのバイクで行って、そのバイクを売ったお金を生活費にしてっていう。今思えばとても行き当たりばったりですけど。当時の自分からしたら十分に計画的ではありました。

そして東京での修行生活というわけですね?どれくらい学ばれたのですか?

バイク売ったお金なんて25万くらいなもんで、さすがにそのお金だけで長期間東京で暮らせるとは思ってなかったですから、最初から1ヶ月くらいかなと思ってそもそも上京したんです。だから修行っていうほどのことでもなくて、というか、結局1ヶ月も金銭的にもたなくて…、途中からはそのお店の職人さんが見かねて自宅に泊まらせてくれてすごく丁寧にしてくれて。約1ヶ月くらいですかね。彫金だけじゃ食えないなぁというのもあったので革細工も含めて。手縫いで作る職人がいるなら俺もできるでしょみたいな。変な根拠のない自信がありましたね。

失礼ですがそれはおいくつくらいの時ですか?

23歳の時ですね。仕事もやめて、大分の家も引き払って、売る予定のバイクに乗ってきた青年をよく迎え入れてくれたものだなぁと思います。実際、バイクを売って本当に東京に来るとは思っていなかったみたいで、大分から変な奴が来たと笑われました(笑)

とはいえ1ヶ月で修行も終えて大分に無事帰ってくるわけですよね。

はい、さすがに帰りは寝台列車に乗りましたが、無事に。とはいえ大分に帰ってきても家はすでに引き払っていたので、唯一残していたハイエースに住んでました。そしてその中に机を作って、そこを自宅兼工房にして毎日そこで過ごしてましたね。毎日のように職務質問に会うんですけど(笑)

ハイエース時代から今の店舗へはどのタイミングで転身されたのですか?

ハイエース時代の主な顧客は高校生ばっかりで、ペアリングつくってあげたりとか。ほら、高校生くらいってすぐにくっついたり離れたりするでしょ?だからペアリングの需要って結構あるんです。ただこのままずっと高校生相手にお金をとるのもなぁと、あとは商売するにあたって当時は固定電話がないって結構信用問題なところもあったので、ちゃんと固定電話のある場所を確保しなきゃとは思っていて。なので東京に出向いた日が4月2日だったので、1年後の4月1日のエープリルフールの日に今の場所に店舗をオープンさせました。

ほとんどの需要はオーダーですか?インスタで拝見させていただく作品は結構無骨な作品も多い気がしますが、男性のお客様が多いですか?

7割はオーダーで、3割はオリジナルという感じです。最近では男女比はほぼ半々くらいで、どちらもプレゼントニーズもあるのでかたよるということはないような気がします。私個人も今買ってきましたって感じがあまり好きではないのですが、お客様からの要望で前からつけて馴染んでるってくらいの塩梅でそもそも作ってくれっていうニーズも多いです。それにリングだけではなくてフェザーとかペンダントとか、最近ではジッポも多いですね。インターネットのおかげで県外からも多くオーダーをいただきます。

鈴木さんご自身はどのようなデザインやトーンがお好きなのですか?

私はどうでしょうか、その人自身が好きなデザインをつけてほしいっていうのがあって。それは私もそうなんですけど、第三者から見て似合う似合わないっていうのはどうでもいいっていうのはあります。特にアクセサリーってファッションの中でも特にそういうものであっていいと思っています。ただ、提案はするようにしています。うちのアクセサリーをつけた人がカッコ悪いとか言われるのは嫌なので(笑)

ここに店舗を構えて15年以上経つわけですが、大分のジュエリーであったり彫金であったりの同業の中でのディアストックさんの立ち位置ってどういう所だと思います?

あまり周りを意識することもないのでよくわからないのですが、どうなんでしょうね。それに15年経ってはいますが、私のこだわりとして作品はすべて長持ちするように作っているので、リピート率は悪いんです(笑)革財布ひとつにしても平気で10年とか持つので。だから今、やっとリピーターが顔を見せてくれるようになってきたところです。

これからなにか新しい展開など考えられているのですか?

店舗は増やすつもりはないんですが、はじめた当初の思いでもあった「技術で人を喜ばせる」ということをもうひとつ昇華させたくて、ちょうど今年から教室スタイルで技術を教える機会をつくっていこうと考えています。私の技術で喜んでもらった人が、またその技術で人を喜ばせるという連鎖が広がっていく感じが楽しみですね。
それに、バレンタインとかに彼氏にあげるプレゼントのオーダーがよく来るんですけど、彼氏にプレゼントするのにおじさんが作るってよく考えたら変じゃないですか。本人が作ったお菓子あげるのが一番でしょ?でも彫金はそうはいかない。そんな不思議なニーズに対して、じゃあプレゼントするそのリング自分で作ってみない?とかできたら。

鈴木さんは普段どんなファッションをされていますか?

ざっくりいうとアメカジでしょうね。仕事中は汚れるので丈夫なディッキーズで。それこそハイスタンダードが昔から好きでして。だからディッキーズにバンズみたいな、上はその都度シャツでシンプルに。

鈴木さんが思うおしゃれな人ってどんな人ですか?

まわりがどうこうとか関係なく、自分が好きだっていうものがあって、それをチョイスして似合っている人。アメカジの文化だとよくあるのが、デニムの歴史とかすごいうんちくを語り合ったりするのが好きなんですけど、そういう時にちゃんと語れる人って面白いし好きだなぁって思います。服の歴史に対してそれを自分が今取り入れてますよみたいな人はかっこいいなって思います。

MY FASHION STORY

大分の海風が吹く無骨な建物の二階に構えるディアストックは、一歩足を踏み入れるだけでオーナー鈴木さんのこだわりや好きなものがぐっと伝わってくる。無鉄砲な二十代を過ごし、自分の思いへ一直線で走ってきた無骨な男っぽいスタイルの一方で、人を喜ばせることが最大の楽しみだと言ってバレンタインのプレゼントリングにまで思いをはせることができる幅の広い魅力を持った鈴木さん。
これから、そんな鈴木さんの喜びの輪がじわじわと広まっていき、それぞれに起きるストーリーがまた素敵な大分をつくる一端になるといい、そう思わずにいられない。

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鈴木秀一 SHUiCHI SUZUKI

大分のアクセサリーショップ「ディアストック」オーナー。全くの未経験から身一つで上京して技術を習得。ハイエースでの活動を経て現在の場所にショップを開店。無骨なデザインが特徴的な作品は、県内外を問わずファンが多い。